
“FF生みの親”坂口氏の渾身の一作のリマスター”ネオディメンジョン”
「ファンタジアン」を語るうえで、坂口氏の存在は欠かせない。“FF生みの親”という肩書がいまでも通用するかといわれると、最近の若者には厳しいかもしれないが、FF5やFF6といったスーファミ時代のFFは間違いなく、JRPGの先導者だった。”ソニックの生みの親”某氏のバランワンダーワールドの様に、時代に合わせて自身をアップデートできていないクリエイターの作品は見るに堪えないものも多い。とはいえ、坂口氏は他にも「クロノトリガー」などの超名作にもかかわっており、期待値が高かった古参もいるはずだ。実際ファンタジアンのチャプターにも「仲間を求めて」というFF6屈指の名曲のタイトルが使われているなど、坂口氏の過去作品を意識していることがわかる。この「昔名作を作っていたクリエイターが現代に合わせてつくった作品」という視点があるかないかでファンタジアンの評価は大きく変わる。
※筆者は約70時間で2週プレイしトロコン済み(内訳は1周目55時間、2周目15時間)、一部ネタバレも含みます
ここが良かった「ファンタジアン ネオディメンジョン」
- 多人数パーティなのに、全員が活躍する戦闘やキャラクターバランス
多くのキャラが登場するRPGでは、自分が好きもしくは強キャラを使い続けてパーティが固定されるという事態がしばしばおこるが、ファンタジアンはそれがない。例えば、「レオア+キーナ+シャルル」のハーレムパで進めていこうとすると攻撃+タンク+回復としては成立するが、バフデバフ+範囲攻撃としては物足りない。逆に「レオア+ジニクル+タン」のおじさんパで進めようとすると、物理+タンクの点では問題ないが、魔法面や回復面で不安が残る。つまり、属性、ボスギミック、状態異常などといった様々な要素をうまく組み合わせて、全キャラうまく駆使してて戦ってねという製作者側の意図を強く感じる戦闘なのだ。まるでパズルのように感じられる面もあり、考えながら戦闘するのが好きなプレイヤーにはとても刺さるものだろう。ぜひ初見を高難易度でプレイしてみてほしい。とはいえ、エズの「クイックオール」とか2週目以降のレオアの「神殺し」とか強すぎないか?という要素はあるのだが…。 - ミニチュアの世界の入り込んだような独創的なグラフィック
登場するマップはすべて実際に模型を作成し撮影した映像をゲームに取り込んでいる。それを知った上でプレイすると、よくぞ作ったなという気持ちがわいてくる。とはいえ、このゲームのレビューには「グラフィックがPS2レベル」といった批判が多数寄せられていることも承知している。オクトパストラベラーやドラクエ3リメイクに代表されるHD2Dの様に、この作り方で作ったゲームの見栄えは「こういったもの」、もともとはapplegameというケータイむけに作られた作品であること前提でプレイしないと確かにそういう気持ちになるなというのも分かる。手抜きゲームによくある家の扉はあるけれども中には入れない、といったガッカリポイント少なく、家中まで丁寧に作られており個人的には好感だった。 - コミカルさも感じさせる3Dモデルの動き
登場するキャラクターがAAAタイトルの様にリアル過ぎないという点もこのゲームにはぴったりだったと思う。思い返してみてほしいのだが、昔のドット絵のキャラクターはコミカルな動きがとても魅力的だった。ちょっとマニアックだが、FF5で主人公バッツとクルルがふざけあって、バッツがクルルにタックルをかまし、仕返しにクルルがバッツにタックルを返して吹き飛ばすというシーンがあるのだが、これを現在の高解像度のAAAタイトルで再現したらBPOも真っ青の鳥肌シーンである。昔のゲームをリメイクする際、こういうシーンをどう表現するかが難しいというのは聞いたことがある。でも、日常会話パートは特に意味のないシーンに見えて、キャラに感情移入するには大切なシーンなのだ。その点、ファンタジアンはアニメ調のキャラグラとも親和性のある3Dモデルで、適度にキャラクターも動いて、コメディ要素もあり、感情移入が図れるゲームにはなっていたかなと思う。チクッタ&ハクッタなんてもろにクロノトリガーのロボのオマージュ感あるけど、結構好きになれたり。
ここがダメだよ「ファンタジアン ネオディメンジョン」
- エンカウント多すぎ問題
ディメンジョンシステム(エンカウントを後回しにして一気に多数の敵とまとめて戦闘できる)を導入したのに、あまりに頻繁にエンカウントするものだから、まるで通常の戦闘をする感覚で、30体以上のモンスターを相手にしなければいけないという事が多い。しかも逃走は不可!というのがかなり苦痛だった。中盤~終盤までのぐんぐんレベルが上がるタイミングならいいのだが、終盤も終盤レベルが上がりきった状態(もしくは経験値が少なすぎて戦う意味のないモンスター)でも時間をかけて戦わなければならない…これはツラかった。感覚的にはまるで往年の大貝獣物語2のようだ。
※フォローすると、2週目では「エンカウント率半減」「歩行速度2倍」「鍵無制限」といったまるで別ゲーかと思うぐらい快適になるシステムもある。なぜ1週目からこのアビを開放できるようにしなかったんだ… - カメラ移動で酔う問題
人によっては大きな障害となるであろうこの問題。模型を撮影した固定フィールドをマップにしている以上、ソウルライクゲームの様に左スティックで移動、右スティックで視点といったように自由な視点変更ができないのはしょうがない。しかしかなりの勢いでグワンと画面が動いて、強制的に視点が変更されるので慣れるまではけっこう違和感がある。右方向にスティックを倒して移動中に視点が動いたりすると、キャラクターは切り替え後のマップでも前画面での移動を継続してしまい、意図しない方向へ動き続けるという事が結構ある。そのため画面が動いた瞬間に一度スティックから手を放し、改めて動きたい方向にスティックを倒すという本来不要な挙動を繰り返すことが多かった。 - ストーリーや世界観は好みの問題か
柱のストーリーの中に、キャラクター別のエピソードが盛り込まれているという構成は、FF6ぽさを感じた。この辺は坂口氏も間違いなく意識しているだろう。個人的にはFF6の柱である「ティナ」の話(幻獣と人間のハーフであるティナがどう生きる意味を見つけるか)といった話ほど引き込まれるものはなかった。とはいえ基本は抑えていて、人の心が宿るロボ、過去からの決別、親父の背中を追いかける主人公、といった定番要素がてんこ盛りなので手軽に王道のストーリーを楽しみたいという人にはもってこいだ。
なつかしのRPG好きならやって損はない丁寧な作品
いろいろ私見を述べてきたが、結論としては”やって損はない作品”だと思う。キャラクターデザインも魅力的だし(主人公がニーアの影響受けすぎじゃないかという意見も)、とりわけボス戦闘に関して言えば、近年まれにみる調整でうならせるものがあった。坂口さんもまだまだ捨てたもんじゃないな、ぐらいは感じさせてくれる作品です。でもネオディメンジョン版に「FFのBGMに変更可」なんて機能はいらなくないかな?過去のIPに頼らず勝負しようよと思ったのは内緒…
残念なのはやっぱりシステム面。applegameからの移植という事で、絶対にエンカウントやカメラに関するネガティブな意見とかは事前に把握していたと思うのだけれども、そこら辺はどうにかならなかったのだろうか。筆者はケータイ版はプレイしていないので分かりません。
あと最後に言いたい。ファンタジアン ネオディメンジョンのPVって640万回も再生されてるんだよ!ドラクエ3HD2D以上にYouTubeで再生されてるのに、売り上げには繋がらなかった。もっとうまく宣伝できたんじゃ…

コメント